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変わりたいあなたへ、最初の一歩

ある日の朝、お寺の庭を掃きながら、私はふと立ち止まりました。多くの人が「変わりたい」と願いながらも、その最初の一歩が踏み出せずに苦しんでいる。今日、このブログを読んでいるあなたも、もしかしたら同じ気持ちかもしれません。人生をより良くするために、私たちにできることは何でしょうか。

変われない理由の奥に潜むもの

私たちは皆、「変わりたい」と心から願うことがあります。新しい自分になりたい、もっと成長したい、今の状況を変えたい、と。しかし、そう願いながらも、なぜか行動に移せない。あるいは、たとえ行動しても、なかなか続かない。その理由は何でしょうか。
私がお寺で多くの人々の悩みを聞いていて感じるのは、まず「本気」になれていないという側面です。本気で変わろうとする覚悟がなければ、人は変わりません。これは、修行の道に入ろうと志す人にも言えることです。例えば、お坊さんの世界では、厳しい修行を乗り越える「本気」が求められます。それは、ただ知識を詰め込むこととは全く違います。私自身も、修行道場での日々や、空手の稽古を通して、この「本気」の壁に何度もぶつかってきました。心の中では変わりたいと願っていても、日々の慣れ親しんだ習慣や、過去の自分に無意識のうちに縛られていることが少なくありません。
また、変われない理由の一つに、「過去の努力にすがってしまう」ということがあります。これまで頑張ってきたこと、苦労してきたこと。それがたとえ、今の自分を苦しめている原因になっていても、人はそれにしがみついてしまいがちです。まるで、窓ガラスに何度もぶつかりながらも、そこを通り抜けようとする鳥のように、別の開かれた窓があることに気づかないのです。私たちは、知らず知らずのうちに、自分の行動や考え方にパターンを作ってしまいます。それは日々の生活の中で身についた「習慣」であり、その習慣が変化を阻む大きな壁となることがあります。先祖供養を行う中で、ご自身の家系が長年培ってきた習慣や思考の癖を振り返ることも、この「変われない」根源に気づくきっかけとなるでしょう。

変化を受け入れる心構え

では、その「変われない」という壁を乗り越えるために、どのような心構えが必要なのでしょうか。仏教の教えは、私たちに「捨てる」ことの大切さを教えてくれます。ここでいう「捨てる」とは、過去の経験や、自分を縛る不要な概念、そして無益なプライドを徹底的に手放すことです。私がお坊さんの修行道場で学んだ「出家」という言葉も、単に家を出るという意味ではありません。それは、これまでの自分を形作ってきた古い習慣や、身についた知識、そして凝り固まった思考パターンを、自ら手放し、新しい自分へと生まれ変わる「覚悟」を意味します。

時には、「どん底まで落ちる」経験も、新たな変化の始まりとなります。私自身の経験でも、予期せぬ困難や、体調を崩して死に直面するような出来事がありました。そんな時、人は初めて自分の弱さや限界を知り、現状を変えたいと強く願うようになります。それは、一見すると怖いことのように思えるかもしれません。しかし、自分の弱さや足りないところを真正面から見つめ、それを素直に受け入れることで、私たちは初めて本当の意味で変化の扉を開くことができるのです。

自分を変えるためには、まず自分自身を深く「知る」ことが不可欠です。自分がどんな人間で、何が得意で、何が苦手なのか。そして、何に執着し、何を手放すべきなのか。この自己理解こそが、変化への第一歩となります。また、他者の意見や評価に過度に左右されず、自分自身を信頼し、自分を拠り所とする強さも必要です。過去の出来事や他人の言動によって自分を責め続けるのではなく、それらの「事実」と、そこから生まれる自分の「感情」を冷静に切り離して見つめることで、心は少しずつ楽になっていきます。

小さな一歩と仏教の智慧

変化を促すための具体的な行動は、日常生活の小さな実践から始まります。それは、決して特別なことではありません。例えば、私たちが普段使っているスマートフォンやパソコンの利用時間を見直すこと。あるいは、朝の時間を有効に活用するために、少し早起きをしてみること。日々の習慣の中で、自分が改善したいと思う小さな一点に意識を集中し、そこから変えていくのです。
仏教の教えには、「布施」という実践があります。これは、単にお金を与えることだけを指すのではありません。自分の持っている知識、技術、時間、そして笑顔など、誰かの役に立つことを惜しみなく「与える」ことです。自分が何かをもらうことばかりを求めるのではなく、まず自分から与えることで、周囲との関係性が変わり、やがては自分自身の心も満たされていきます。これは、先祖供養の精神にも通じます。ご先祖様への感謝の気持ちを捧げ、その恩恵を心から受け取ることで、私たち自身の心も豊かになるのです。
また、私たちは誰かに教わったり、誰かの行動を「真似ぶ」ことから多くのことを学びます。自分一人で全てを解決しようとするのではなく、自分が尊敬できる人や、目標とする人のやり方を見て、それを真似してみるのです。それは、決して真似事ではありません。その過程で、自分なりの工夫や発見が生まれ、やがては自分自身の「役割」を果たすことへと繋がっていきます。
「今、ここ」に意識を集中することも、変化への重要な鍵です。過去を悔やんだり、未来を案じたりするのではなく、今この瞬間に自分ができることに全力を尽くすのです。それが、たとえ苦手なことであっても、面白くないと感じることであっても、目の前のことに一所懸命に取り組むことで、予期せぬ道が開けてくることがあります。時には、自分を鼓舞するために「喝」を入れることも必要です。「決める」こと、そしてその決断に従って「行動する」こと。この小さな一歩の積み重ねが、やがて大きな変化となり、あなたの人生をより豊かなものへと導いてくれるでしょう。

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