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後悔しない結婚:理想と現実を生きる智慧

結婚は、多くの人にとって人生の大きな節目であり、幸せな未来を夢見るもの。しかし、現実には理想と異なることも少なくありません。もし今、結婚について迷いや不安を抱いているなら、後悔のない選択をするための心の在り方について、私の考えをお伝えしたいと思います。

理想と現実の狭間で

「愛する人と結婚したら、きっと幸せな家庭が築ける」—誰もが抱く、素朴で美しい理想です。しかし、現実はそう単純ではありません。私たちが日々向き合う人間関係は、時に予測不能な波乱に満ちています。寺で多くのご夫婦の人生を見てきた経験からも、愛し合って結婚したからといって、その後の人生がずっと幸福で満たされるとは限りません。
ある方は、経済的な豊かさ、友人に恵まれた環境、仕事での成功、そしてパートナーとの関係、すべてを手に入れているように見える友人を羨ましく思っていました。しかし、外から見える「すべてを持っている」状態が、必ずしも内面の「幸せ」につながるとは限りません。物質的に満たされていても、心に漠然とした不安や空虚感を抱える人は少なくないのです。
結婚とは、単なる夢の実現ではなく、現実の生活の中で互いの良い面も、そうでない面も受け入れながら、共に歩んでいく覚悟が問われる場でもあります。時に、自分が思い描いていた姿と異なる現実に直面し、失望することもあるでしょう。しかし、その時、私たちはどのようにその現実と向き合い、乗り越えていくべきなのでしょうか。

向き合う勇気と受け入れる心

結婚生活における困難は、私たち自身の「心の在り方」を試す機会でもあります。例えば、ある方は、結婚を控えた婚約者との関係で、自身の気分屋な性格やだらしなさに直面し、苦悩していました。これまでのパートナーは、彼の欠点に触れず、そっとしておいてくれたため、彼は自身の問題と向き合う機会がありませんでした。しかし、今の婚約者は、彼の弱い部分を指摘し、共に解決しようとしてくれます。
これは、彼にとって大きな変化のきっかけとなりました。自分の弱さを認め、相手の優しさに甘えるだけでなく、共に問題を乗り越えようとする姿勢が大切です。結婚は、互いに「完璧な存在」を求めるものではなく、互いの不完全さを受け入れ、支え合う関係性なのです。
また、ある方は、結婚生活が長く続く中で、夫の無関心や感謝の欠如に苦しんでいました。その時、私は「この人は、そういう風にしかできないのかもしれない」という視点を持つことを提案しました。相手を「悪い人」と断罪するのではなく、彼らなりの特性や背景を理解しようと努めること。この理解の姿勢が、私たち自身の心を苦しみから解放し、穏やかさをもたらす一歩となるでしょう。

与える喜びが育む絆

後悔のない結婚生活を送るために最も大切なことの一つは、「与える喜び」を知ることです。私たちは「もらいたい」という感情を強く持っていますが、本当の心の豊かさは、自分から惜しみなく他者に与えることの中にあります。
ある方は、孤独感を埋めるために物質的なものを追求したり、一時的な楽しみを求めたりしましたが、心は満たされませんでした。真の充足感は、自分が持っている知識、技術、時間、あるいは笑顔といったものを、誰かのために差し出す行為から生まれます。
夫婦関係もまた、一方的に与えられることを期待するだけでは、いずれ破綻をきたします。互いに与え合い、相手の喜びを自分の喜びと感じられる関係こそが、長く続く強固な絆を育むでしょう。相手の良いところに目を向け、感謝の気持ちを言葉にし、そして自分から積極的に相手を思いやる行動を実践する。
結婚は、私たち自身の内面を磨き、人間として成長していくための「修行」の場でもあります。完璧な相手や理想の状況を求めるのではなく、目の前のパートナーと共に、一歩一歩、互いに与え合い、支え合いながら歩むこと。その先に、後悔のない、真に豊かな人生が待っていると信じています。

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