数字に込められた祈りの意味 〜年回忌法要と「3」と「7」の由来をたどる〜

お盆やお彼岸の折、あるいは命日の近くに、ご家族やご親族が集まり年回忌法要を営む光景は、今も日本各地で大切にされています。
その際、「三回忌」「七回忌」「十三回忌」など、特定の数字がついた法要を耳にされたことがあると思います。
なぜこれらの数字が選ばれてきたのでしょうか。
今回は、年回忌法要における「3」や「7」の数字の由来を、正しい歴史や仏教の教えに基づいてご紹介いたします。

年回忌法要の数字のルーツは忌日法要にあり

年回忌法要は、そもそも「忌日法要（きにちほうよう）」という亡くなった日からの日数に基づく法要がもとになっています。
仏教においては、亡くなった後の魂はすぐに次の生（六道：地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天）へ向かうのではなく、
一定の期間、裁きを受けながら成仏への道を歩むとされています。

この考え方の基盤は古代インドに生まれ、中国を経て日本へ伝わりました。
亡き人は、亡くなった日から四十九日（七七日＝なななぬか）までの間に、七日ごとにあの世の十王の裁きを受けるとされ、
その都度、遺族は追善供養を行い、亡き人の成仏を願いました。

この「七日ごとに行う法要」が、数字「7」に象徴的な意味を与えることになったのです。

四十九日までの七日ごとの供養と「7」の意味

初七日（7日目）、二七日（14日目）、三七日（21日目）、四七日（28日目）、
五七日（35日目）、六七日（42日目）、そして七七日（49日目）。
これらの七日ごとの法要は、魂が閻魔大王をはじめとする十王から裁きを受ける節目とされていました。

七という数字は、仏教において円満・調和・完全性を示す聖なる数とされ、
七宝、七仏、七支坐禅（しちしざぜん）、七難即滅七福即生（しちなんそくめつしちふくそくしょう）などにもその名残があります。

七日ごとの供養が成仏の道のりに欠かせないとされたことで、
やがてその思想は「年回忌」という形式に移り、七回忌、十三回忌、十七回忌、二十三回忌……と続く供養の節目に数字「7」が取り入れられるようになったのです。

年回忌での「3」の由来と意味

一方、「三回忌」という数字にも由来があります。
三回忌は、亡くなった翌年に営まれる供養であり、実際には亡くなった年を一回忌（忌中）と数え、
翌年を二回忌、次を三回忌とする数え方から名づけられました。
つまり、三回忌は亡くなった翌年に行う供養にあたります。

仏教では「三」という数字もまた重要視されています。
たとえば、三宝（仏・法・僧）、三学（戒・定・慧）、三界（欲界・色界・無色界）、三業（身・口・意）といったように、
「三」は調和や完成、均衡を示す数字とされてきました。

そのため、三回忌は亡き人の魂が成仏し、安らぎの境地へ至ることを改めて祈る、
重要な節目の法要として大切に営まれるようになったのです。

数字そのものより大切なもの

年回忌において「3」や「7」が目立つ理由は、以上のように仏教の教えや死後の成仏への道筋と深く結びついています。
ただ、ここで忘れてはならないのは、数字そのものが供養の目的ではないということです。

「三回忌だから営まなければならない」「七回忌だから盛大にしなければならない」というのではなく、
これらの節目を通して、亡き人を偲び、感謝の心を新たにし、今の自分を省みることにこそ意味があるのです。

数字はその節目を示す道しるべであり、私たちの祈りの心があって初めて法要の価値が生まれます。

数字の背景にある追善供養の心

年回忌法要は、故人の成仏を願う「追善供養（ついぜんくよう）」の一環です。
追善供養とは、故人が生前に行えなかった善行を、遺族や縁者が代わりに行い、
その功徳を故人に回向（えこう：功徳を振り向けること）することを意味します。

年回忌はその追善供養の機会であり、花を手向け、線香を焚き、僧侶の読経をいただくことを通じて、
故人の安寧を祈るとともに、残された者の心もまた浄められるのです。

現代の年回忌法要の意義

近年では、ライフスタイルの変化や都市化の進行により、年回忌法要の形も多様になってきました。
大勢で集まるのが難しい場合、小規模な法要やオンラインでの参列、あるいは寺院に任せる永代供養法要など、
さまざまな方法で祈りの心が表されています。

大切なのは、形ではなく心です。
「三回忌だから」「七回忌だから」と義務感で営むのではなく、
その機会にあらためて故人を偲び、自分自身の歩みを整える時間にしていただければ、
その法要はきっと功徳深いものとなるでしょう。

まとめ 〜数字に込められた祈りのかたち〜

年回忌法要において「3」や「7」が用いられるのは、仏教の成仏観や修行の思想、そして日本人の死生観の中で大切にされてきたからです。
けれど、数字はあくまで節目を示す目印に過ぎません。
その節目ごとに、手を合わせ、花を手向け、心の中で亡き人と語らう。
そこに、供養の本質が息づいています。

これからも、年回忌の節目を大切に、祈りの心を次の世代へとつないでまいりたいものです。