未来を照らす生き方
年の瀬が迫り、慌ただしい日々の中にも、どこか静けさを感じる大晦日。私たちは皆、過ぎゆく一年に思いを馳せ、来たる新しい年に心を向けています。ふと、「このままで良いのだろうか」「これからどう生きていけば良いのだろう」と、漠然とした不安に包まれることはないでしょうか。今回の記事では、和尚の日常生活からの気づきをきっかけに、この不安とどう向き合い、自分らしい喜びと充実を見出すのか、仏教の教えに耳を傾け、心穏やかな未来へと歩みを進めるためのヒントを探ります。
移りゆく時間の中で「今」を見つめる
大晦日の夜、静かに一年を振り返るとき、喜びも悲しみも、様々な出来事が走馬灯のように脳裏をよぎります。あっという間に過ぎ去ったと感じる日々に、時間の流れの速さを実感することでしょう。お釈迦様は「諸行無常」と説かれました。この世のすべては移ろい、常に変化し続けるものです。私たちの人生もまた、この波のように上がったり下がったりを繰り返します。順風満帆な時もあれば、困難に直面し、心が折れそうになる時もあるかもしれません。しかし、喜びの時も、苦しい時も、そのすべてが私たち自身を見つめ、人間的な深みを増し、成長させる大切な機会なのです。
過去の失敗や後悔に囚われたり、未来への漠然とした不安に心を奪われたりすると、私たちは「今、ここ」というかけがえのない瞬間を見失いがちです。未来はまだ訪れておらず、過去は過ぎ去ったものです。私たちが唯一、確かに存在し、何か行動を起こすことができるのは、「今、ここ」というこの瞬間だけです。人生の選択に迷ったとき、将来を想像し、自分がどうありたいかを問い直すことは大切ですが、その問いの答えは「今、ここ」の行動の中にしか見出すことはできません。過去を悔やみ続けるのではなく、未来への不安に立ちすくむのでもなく、「今、ここ」を懸命に生きることが、揺るぎない心の土台を築き、望む未来を切り開くための最も確実な道となるでしょう。
未来への不安と「やりたいこと」の探求
新しい年への期待とともに、未来への漠然とした不安や、「本当にやりたいことは何だろう」「自分の人生の意味は何だろう」といった問いかけを抱える方もいらっしゃるかもしれません。明確な目標が見つからず、何から手をつけていいか分からない、という悩みも少なくありません。人生において、必ずしも壮大な「やりたいこと」や「天職」が目の前に現れるとは限りません。むしろ、自分が「なりたくない状態」を避けることから、進むべき道が見えてくることもあります。例えば、経済的な不安や孤独な状態は避けたい、と強く思うことで、そのために今何をすべきかが明確になる場合があります。
また、もしも将来の明確な目標が見つからないのであれば、野球の「キャッチャー」のように、目の前に来る球をすべて受け止め、ひたむきに取り組んでみるのも一つの方法です。どんな仕事や役割でも、まずは目の前のことに全力を注いでみる。そうすることで、思いがけないご縁や新たな可能性が広がり、やがて自分にとって本当に大切なもの、情熱を傾けられるものに出会えるかもしれません。大切なのは、日々の地道な積み重ねです。一見、単純で退屈に思えることでも、心を込めて、効率を考えながら工夫して取り組むことで、それは必ずや揺るぎない力となり、自分を成長させ、新たな人生の扉を開いてくれるでしょう。
喜びを見出す「与える」生き方
真の心の豊かさや人生の喜びは、物質的な豊かさや、何かを「受け取る」ことだけで得られるものではありません。私たち人間は、誰かに何かを「与える」ことで、深い充足感と喜びを感じるようにできています。仏教には「布施(ふせ)」という大切な教えがあります。これは、単にお金を与えることだけを指すのではありません。自分の持つ知識や技術、時間、そして何よりも温かい笑顔や思いやり、勇気を与えることもまた「布施」です。
私たちは、一人では生きていけません。自然界の生き物たちが互いに支え合いながら生きているように、人間もまた、与え、与えられる関係性の中で生きています。すべての人が「欲しい」「受け取りたい」と願うばかりでは、関係性は滞り、孤独感が深まるばかりでしょう。しかし、「与える」という行動は、その関係性を活性化させ、人々に喜びをもたらし、結果として自分自身にも豊かな心のつながりをもたらします。人に喜びを与え、役に立とうと努力する「利行(りぎょう)」の精神は、あなた自身の人間性を高め、周囲から信頼される存在へと導きます。
今年の大晦日を迎え、来たる新しい年を心から充実したものにしたいと願うのであれば、まずは「今、ここ」で自分にできること、そして周りの人に「与えられること」に意識を向けてみませんか。たとえ小さな一歩でも、その積み重ねが、やがてあなた自身の人生を豊かに照らす光となり、多くの人々と温かいご縁を紡いでいくはずです。与える喜びを知る生き方は、きっとあなたに真の心の平安と、尽きることのない幸福をもたらしてくれるでしょう。