仕事の悩み:苦難を乗り越え、自分を磨く道
仕事は人生の大きな部分を占め、喜びだけでなく、時には深い悩みをもたらします。上司との関係、努力が報われないと感じる時、あるいは自分の進むべき道が見えない時。今回は、私が仕事の悩みにどう向き合い、乗り越えてきたのか、その経験と仏教の智慧をお話しします。
努力の方向性と「真似ぶ」智慧
仕事で成果が出ない、あるいは正当に評価されないと感じる時、私たちは「こんなに頑張っているのに」と不満を抱きがちです。しかし、その努力の「方向性」が、評価する側やお客様が求めているものと異なっている可能性はないでしょうか?
ある方は、昇格試験に何度も落ち、30代の女性が一度で合格したことに不公平さを感じていました。彼は一生懸命努力していましたが、その努力が試験官の基準に達していなかったのです。大切なのは、ただ頑張るだけでなく、評価する側の視点に立ち、どのような努力が求められているのかを理解することです。
最初はうまくいかなくても、尊敬できる人のやり方を徹底的に真似ることで、着実に上達し、目標を達成することができました。
私たちは皆、完璧ではありません。だからこそ、自分より優れた人、結果を出している人から素直に学び、その知識や技術、心構えを自分のものにする「真似ぶ」姿勢が、困難を乗り越える大きな力となるのです。
困難の中に見出す「戦い」の意義
仕事の現場では、ハラスメントや人間関係の摩擦など、理不尽な状況に直面することもあります。そのような時、逃げることも一つの選択肢です。しかし、もしあなたが「ここで戦いたい」と願うのであれば、その「戦い方」には智慧が必要です。
ある方は、上司からのパワハラに苦しみ、会社を休職していました。彼は会社に戻る決意を固めていましたが、恐怖心を克服する方法を求めていました。私がお伝えしたのは、「自分を知り、相手を知り、そして仕事を知る」という準備の大切さです。感情的にぶつかるのではなく、状況を冷静に分析し、戦略的に行動するのです。
さらに、上司に対して意見を伝える際には、「本来の会社の目的」という高い視点に立つことが重要です。個人の感情ではなく、会社全体にとって何が最善なのかを伝え、建設的な対話を図る。これは時に、嫌われるリスクを伴うかもしれませんが、相手が本当に尊敬できる人物であれば、あなたの真意を理解してくれるはずです。
このような「戦い」は、私たちを精神的に強くし、困難を乗り越えるたびに人間として大きく成長させてくれます。目の前の苦難を避けるのではなく、正面から向き合い、乗り越えることで、新たな道が開かれるのです。
「与える喜び」が拓く未来
仕事の悩みの根底には、「自分は何がしたいのか」「何のために働いているのか」という問いがあるかもしれません。私自身も、かつて寺を飛び出し、様々な事業を立ち上げる中で、その問いと向き合ってきました。そして気づいたのは、仕事とは単にお金を稼ぐ手段ではなく、「社会に価値を生み出す仕組み」であるということです。
仏教では、「与えること」が真の豊かさをもたらすと説きます。お釈迦様は何も持たずとも、常に智慧と慈悲を与え続け、多くの人に支えられました。私もまた、人々が心穏やかに生きる智慧を伝えることで、多くの方々から様々な機会をいただいています。
もし今、仕事に対して情熱を持てず、消化試合のように感じているなら、それはまだ「与える喜び」の深さに気づいていないのかもしれません。自分の持てる知識、経験、能力を惜しみなく社会や他者に提供する。お客様や同僚が喜ぶ姿に、自分の喜びを見出す。その「喜び」こそが、仕事に対する情熱と活力を取り戻す鍵となります。
目の前の仕事に「仕方なく」取り組むのではなく、そこに喜びを見出し、心を込めて取り組むこと。そして、自分から積極的に「与える」ことを実践していく。この姿勢が、どんな仕事の悩みをも乗り越え、あなた自身の人生をより豊かに切り開いてくれることでしょう。