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暑い中のご参拝に感謝して ― お花に込められた祈りの心

厳しい夏の日差しが近づく6月中旬、境内を渡る風のひとすじに、ほっと心が和むひとときがあります。
日中の陽射しはすでに力強く、初夏の空気が境内の石畳を明るく照らしていました。

そんな中、先日もお一人のご年配の女性が、ゆっくりと足を運んでくださいました。
帽子をかぶり、日傘をさし、片手には、白い菊と黄色の花を組み合わせた花束がありました。
汗ばむ陽気の中でも、そのお姿はとても落ち着いていて、どこか涼やかな印象さえ受けました。

供花に込められた思い

「暑くなりましたね」とお声をかけると、その方はにこやかに微笑まれ、「少しでも花が元気なうちにお供えしたくて」とおっしゃいました。

その手にあった白菊の花は、凛とした姿でまっすぐ立ち、
黄色の花の小さな花弁が、日の光を浴びてやさしく輝いていました。
お供えいただいた花は、まるでその方の祈りの心そのもののように見えました。
花の持つ清らかさと、ご家族や大切な方を想う気持ちが、そっと仏さまの前に届けられたのです。

少しの語らいの中で

お参りを終えられた後、少し木陰でお話をいたしました。
「こちらに来ると、やっぱり心が落ち着きますね」とその方は穏やかに語られました。
「今日のように陽射しの強い日でも、ここはきれいに整っていて、それだけでも足を運んでよかったと思えるんです」と。

私はその言葉に、日頃から心を込めて清掃や管理に努めていることが、こうしてお参りに来てくださる方の安心や喜びにつながっているのだと、あらためて感謝の気持ちが湧いてまいりました。

日々の清掃と心配り

毎日境内や墓域を丁寧に掃き清め、草取りや供花の水の入れ替えを行っております。
特にこの時期は、暑さで花が傷みやすいため、こまめに様子を見て、枯れかけた花は片付け、新たに水を足し、訪れる方が気持ちよく手を合わせていただけるよう心がけています。

清掃は単なる作業ではなく、ここに眠る方々と、その方を偲び訪れてくださる方々への祈りの一つです。
境内の石畳を掃くたび、供花の花立を整えるたび、私たちは心の中で「今日も皆さまが穏やかでありますように」と願っています。

6月のこの季節、静けさの中に風の音と鳥のさえずりだけが響きます。
その中で、そっと供えられた白菊と黄色の花が、静かに仏さまの前に咲いている光景は、とても美しく、心に残るものでした。

花を供え、手を合わせる姿。そこには言葉を超えた祈りが宿り、その祈りが、この場を、そしてここに集う人の心を優しく包んでくれているように思いました。

こうしてお参りに来てくださる方のひとつひとつの想いが、この場所の空気をより清らかに、より温かなものにしてくれているのだと感じます。

私たちもこれからも、皆さまが安心して、心静かに手を合わせていただけるよう、清掃・管理に心を尽くしてまいります。

暑さの折、どうぞ無理のない範囲でお参りにお越しくださいませ。
そしてまた、手を合わせるその心を、この場所でお寄せいただければ幸いです。

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