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暑さの中で心と体を守る ― 夏の日々の祈りと気づき

夏の日差しが強くなるにつれ、境内の木々の葉もその緑を濃くし、空には入道雲が姿を見せ始めました。
厳しい暑さの中で、日陰に吹くわずかな風が一層心地よく感じられる今日この頃です。
今年もまた熱い日が続いておりますが、皆さま、体調を崩されたりしてはおられませんでしょうか。

毎年この季節になりますと、私はご参拝に訪れる方々の様子が気になり、お声をかけさせていただく機会が増えます。
「今日は本当に暑いですね。どうぞ無理をなさらず、まずは日陰でお休みください。」
そう申し上げると、「お寺に来ると心が落ち着くから、つい足を運んでしまいます。」と、
微笑みながら答えてくださる方もおられます。

しかし、この時期は特に熱中症にご注意いただきたい季節です。
汗をたくさんかきますと、体の中の大切な水分が奪われ、体調を崩してしまうことがあります。
私たちは日々の暮らしの中で、どこか無理をしてしまいがちです。
「もう少し大丈夫だろう」「ここまで来たのだから」
そんな思いが、知らぬ間に体に負担をかけてしまうこともあります。

今日は、暑い季節にあたって、熱中症や体調管理について、
そして仏教の教えを通して日々の暮らしを見つめ直す、そんなお話をさせていただければと思います。

暑さを侮らない心 ― 熱中症を防ぐために

熱中症は、ただ暑い場所に長くいたときだけに起こるものではありません。
湿度が高い日や、風通しの悪い室内、日頃の疲れがたまっているときなど、さまざまな状況で体のバランスが崩れることで起こります。

熱中症を防ぐために何より大切なのは、水分補給と休息です。
仏教には「中道(ちゅうどう)」という教えがあります。
これは、どちらかに偏らず、無理をせず、調和の取れた生き方をすることの大切さを説いたものです。

私たちはつい頑張りすぎてしまったり、自分の体の声を聞き逃してしまうことがあります。
「喉が渇いてからでは遅い」とも言われますが、まさにその通りで、喉の渇きを感じる前に意識して水を口にすること、汗をかいた分を補うこと、そして時には日陰や涼しい場所で一息つくことが、この暑い季節を健やかに過ごすための大切な心がけです。

水のありがたさに気づくとき

暑い夏、冷たい水を口に含んだとき、私たちはその水のありがたさをしみじみと感じます。
体の隅々まで染みわたり、ほっと心が落ち着くような、そんな感覚になることがあります。

仏教の教えに「四摂法(ししょうぼう)」というものがあります。
これは、人と人とが和を保ち、支え合いながら生きるための在り方を示した教えです。
その中のひとつに「布施(ふせ)」があります。
布施とは、物を施すことだけでなく、思いやりの心、気遣いの心を持って接することを意味します。

水を分け合う、涼しい場所を譲る、ひと声かける。
それもまた布施の心であり、この暑い季節こそ、私たちが互いにその心を持ち寄るときではないでしょうか。

境内では、お参りに来られる方のために、日陰にベンチを置いたり、必要に応じてお声がけをするよう心がけています。
それは小さなことではありますが、「お互いさま」の心で成り立つ優しさであり、仏さまの教えが生きる瞬間でもあります。

無理をしない勇気を持つ

私は日々、いらっしゃる方々のお顔を拝見しながら、
「どうか無理をなさらないでください」と心の中で何度も願っています。
この季節、私たちはときに「これくらいなら」と無理をしがちです。
ですが、仏教の教えにあるように「身口意(しんくい)」の調和、すなわち体と言葉と心のバランスを保つことこそ、私たちに求められている在り方です。

体の声に耳を澄ませ、「今は休むとき」「今は水を取るとき」と感じたら、その声に素直に従うこと。
それは決して弱さではなく、むしろ自分自身を大切にし、また周りの人を大切にする勇気ある選択だと私は思っています。

暑い中をお参りくださる方には、本当に頭が下がります。
ご先祖さまや大切な方への想い、そのお心に、私も胸が熱くなる思いがいたします。

ですが、どうかそのお気持ちと同じくらい、ご自身のお体のことも大切になさってください。
お参りは「今日でなければならない」というものではありません。
体調が整ったとき、涼しい時間帯を選んでいただいて構わないのです。
そしてお参りの際も、水分をお持ちになり、無理のない範囲で手を合わせていただければ、それだけで十分に心が届くものです。

昌楽寺でも、境内の清掃や木陰の手入れ、ベンチの配置など、皆さまが少しでも心地よくお参りできるよう日々心を尽くしております。
お気づきのことや、お困りのことがあれば、どうぞご遠慮なくお声がけください。

暑い日が続く中で、体調管理や水分補給はもちろんのこと、
心のあり方もまた大切にしたいものです。
無理をせず、頑張りすぎず、けれど大切な方への想いはそのままに。
そのバランスこそが、中道の教えにも通じる、穏やかな夏の過ごし方だと感じております。

どうかこの夏、皆さまがお健やかに、そして穏やかな心で日々をお過ごしになれますよう、仏さまのお恵みが皆さまの上に行き届きますよう、心よりお祈り申し上げます。

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