決断の力、人生を拓く
私もまた日々様々な「選択」に直面します。人生において、私たちは何を基準に物事を決め、前に進んでいけば良いのでしょうか?覚悟と決断。この二つの言葉には、私たちの人生を大きく変えるヒントが隠されています。
覚悟だけでは足りない時
私たちは、人生の節目節目で「覚悟」を決めようとします。新しい仕事に就く時、結婚という大きな一歩を踏み出す時、あるいは困難な状況から抜け出そうとする時。心の中で「よし、やるぞ!」と決意を固める、それが「覚悟」でしょう。しかし、この「覚悟」だけでは、なかなか状況が変わらないと感じることはありませんか?
ある日、私のもとに届いたご相談の中に、会社の後継者として「覚悟」は決まっているものの、プライベートでの決断に苦しむというお話がありました。彼は長年連れ添ったパートナーとの結婚を控える中で、自分の弱点やだらしなさに向き合い、恐れていました。仕事では責任を背負う「覚悟」ができているのに、個人的な「決断」となると心は揺れ動く。これは、私たち誰もが経験する心の葛藤ではないでしょうか。
「覚悟」は、心の中で準備を整えることです。それはとても大切な心の状態です。しかし、それだけでは、実際の行動には繋がりません。心で「よし、やるぞ!」と思っていても、具体的な一歩が踏み出せない。そんな時、私たちに必要なのは「決断」の力なのです。
決断とは、自ら「今」を定めること
では、「決断」とは一体何でしょうか。それは、「覚悟」の上に立つ、具体的な行動への選択です。仏教の教えには、「誓願」という言葉があります。これは、自ら「こうなる」と決意し、その願いに向かって進むことです。これはまさに「決断」を意味しています。
例えば、私の修行時代、私は自らの意思で寺を離れ、外の世界で自分を試そうと決意しました。当時、私にとって「坊主」になることは絶対にしたくないことでした。しかし、その決断の先に、自分自身の弱さや苦手なことと向き合う機会が訪れました。格闘技の世界に飛び込んだ時もそうです。好きではなかった「痛さ」や「苦しさ」を伴う世界に身を投じたのは、自分の弱点を克服したいという一心でした。これは、ただの「覚悟」ではなく、「今、これをする」という「決断」だったのです。
「決断」は、現状維持に甘んじず、自ら変化を起こす勇気です。たとえそれが、人から見れば無謀に見えたり、自分自身が恐怖を感じるようなことであったとしても、「今、ここ」で何をするべきかを見定め、一歩を踏み出すこと。それこそが、「決断」の真髄なのです。
より良い未来は「今」の決断が創る
「決断」は、常に「より良い未来」を見据えてなされるべきものです。将来の目標が明確でなくても、あるいは、何がしたいのかが分からなくても、私たちは「どうなりたくないか」を知っています。その「なりたくない」状態を避けるために、今、何をすべきか。それが「決断」を導き出すヒントになります。
人生の「アップ」の時期は楽しく、何も考えずに過ごせます。しかし、「ダウン」の時期にこそ、私たちの真価や知恵が問われます。「今、ここ」で何を学ぶべきか。それは、自分自身の内面を知り、自らの「決断」によって、より良い未来へと歩みを進めることではないでしょうか。怖くても、不安でも、「決断」の力は必ず私たちを望む未来へと導いてくれるでしょう。