自分の役割を全うする:迷いを越える智慧
私たちは皆、日々の生活の中で様々な役割を担っています。家庭での親や子、職場での上司や部下、地域の一員として。しかし、「私の本当の役割は何だろう?」と迷い、その重さに苦しむことはありませんか?今回は、私たち自身の役割を深く理解し、それを全うする喜びについてお話しします。
役割を知り、責任を果たす
会社という組織は、一人ひとりの役割が明確に定められ、その積み重ねによって成り立っています。それは家庭や地域社会においても同じです。もし、あなたが自分の役割を正しく認識していなければ、たとえ懸命に努力していても、周りからは評価されにくく、自分自身も不満や焦りを感じてしまうかもしれません。
ある管理職の方は、部下のルール違反や遅刻に対して腹を立てていました。しかし、その根本的な問題は、ご自身が「管理職としての役割」を十分に認識し、ルールを徹底できていなかったことにありました。個人の感情で対応するのではなく、チームのルールを明確にし、それを皆に伝えること。そして、早急に適切に対処することこそが、管理職の重要な役割なのです。
仏教には、お釈迦様が弟子たちに説かれた「優れた戒律を保ち、集団のルールを大切にしなさい」という教えがあります。これは、個人が自律すること(戒)と、集団が秩序を保つこと(律)の両方が、組織の繁栄には不可欠であることを示しています。自分の役割が何であるかを深く理解し、その責任を果たすことから、私たちは本当の力を発揮できるのです。
「与える」が自立への道
私たちは皆、他者から様々なものを「もらって」生きています。食べ物、住む場所、仕事、そして愛情。それらを受け取る喜びは、私たちを生きることに駆り立てる本能的なものです。しかし、真に「自立した人間」とは、ただ受け取るだけでなく、自らも他者に「与える」ことができる人のことを指します。
ある方は、経済的に自立したいと願いながらも、親の会社から役員報酬を受け取っている現状に、どこかもどかしさを感じていました。しかし、たとえ少額であっても、何かを受け取っている以上、自分もその会社に「与える」責任があります。笑顔や元気、知識、アイデア、あるいは労力。自分にできる形で、会社や周囲の人々に貢献する。この「与える」という行為こそが、精神的な自立と経済的な自立を同時に実現する道なのです。
会社には、「いなくていい人」「いてもいなくてもいい人」「絶対にいてほしい人」の3種類の人がいると言われます。たとえ短期間の勤務であっても、その会社に利益をもたらし、「この人には絶対にいてほしい」と思われる存在になること。これは、自分の役割を全うし、社会に貢献しようとする姿勢から生まれるものです。
自身の可能性を広げる挑戦
私たちは、学生時代には学校というシステムの中で目標が与えられ、それをクリアすることで成長してきました。しかし、社会に出て、明確な目標が見当たらなくなった時、「自分は何をしたいのだろう」と迷ってしまうことがあります。
ある方は、これまで与えられたレールの上を歩み、大きな挫折もなかったにもかかわらず、人生に「生きている実感」を感じられずにいました。彼は、明確な「生きがい」や「やりがい」が見つからないことに苦悩していましたが、そのような時こそ、「修行」と捉え、目の前の与えられた環境で、できることを全力でやることが大切だと私は考えています。
例えば、尊敬できる先輩を見つけ、その人の動きや考え方を「真似ぶ」ことから始めるのも良いでしょう。自己流に固執せず、素直に優れた人の良い部分を取り入れることで、着実に自分の能力を磨き、成長することができます。
自分の役割を全うすることは、決して「我慢」や「犠牲」ではありません。それは、自分自身の可能性を最大限に引き出し、より豊かな人生を切り開いていくための挑戦なのです。目の前の「今、ここ」で、自分にできること、与えられることに全力を注ぐことで、新たな道が開かれると信じています。