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仏壇やお墓に使われる花の意味とは?伝統・マナー・おすすめをやさしく解説

日々の暮らしの中で、ご自宅の仏壇やお墓に花を手向けるとき、どんな花を選べばよいか悩むことはありませんか?菊・百合・カーネーション・季節の花には、それぞれ仏教的・文化的な意味やマナーがあり、知っておくことでより心を込めた供養につながります。本記事では「仏花」「墓花」「供花」といった用語の違いや、菊がなぜ定番なのか、百合やカーネーションはどうなのか、季節の花の取り入れ方を住職の視点でわかりやすく解説します。

なぜ花を供えるのか ― 花のもつ深い意味

仏壇やお墓に花を供える行為には、主に2つの大切な意味があります。

仏さまの慈悲を受けるため

花は美しく咲いてやがて枯れる――その諸行無常の教えを体現しています。その儚さの中に仏さまの慈悲と忍耐が現れ、花供養として供花することで仏の智慧に触れるとされます。

故人やご先祖への感謝を伝えるため

花言葉を通じて感謝や敬いを表現することができます。仏花・墓花は故人への思いを届ける手段としても知られています。

「仏花」「墓花」「供花」の違い

  • 仏花:仏壇に飾る花。家庭内で祈りの中心となる。
  • 墓花:お墓参りの際に供える花。境内での祈りに用いる。
  • 供花:葬儀や法要の場で祭壇などに供えられる花。

いずれも“故人や仏への敬意を示す供え物”ですが、場に応じた意味とマナーがあります

菊(キク)――仏花の王道

理由① 長持ちする切り花

菊は水に挿すだけで2〜3週間も保つ生命力があり、頻繁に交換せずに済むため仏壇に適します 。

理由② 白色が穢れのない清浄さを象徴

白菊は「ご冥福をお祈りします」という花言葉があり、清潔で落ち着いた印象を与えます。

理由③ 高潔・邪気祓い・長寿の象徴

江戸時代には延命長寿や邪気除けの意味で食用・薬用にもされたといわれ、仏事にふさわしい存在です

花言葉と色別の意味

  • 白:慕う・誠実・真実
  • 黄:高潔
  • 赤・桃:愛情・甘い夢
    など、色によって丁寧に想いを込めることができます

百合は「純潔」「清純」「死」の象徴とされ、お墓や仏壇への供花にも好まれます 。ただし、特にユリ・カサブランカのような花粉が多い品種は花粉汚れが気になるため、花粉除去が必要です

母の日のお墓参りにおいて白いカーネーションを供える習慣が一般化し、花言葉「感謝」を伝える意味でもお供えに適しています。丈夫で長持ちするため、お墓の供花にも向いています。

ユリ以外の香りの強い花

クチナシや金木犀など、強い香りの花は線香の匂いを妨げること、虫が寄る可能性もあるため控えるのが無難です。

トゲや毒のある花

バラなどのトゲがある花、スズラン・スイセンなど毒性がある花はマナー的に避けられることがあります。

ツル性植物

クレマチスなどツルがある植物は「絡まる=成仏を妨げる印象」とされます。

季節に合わせた花を供えることで、故人との思い出や四季折々の自然を感じることができます。以下はおすすめ例です。

季節花言葉
桜・梅慰霊・鎮魂・新生
春~夏ストック・アイリス思いやり・信じる心
ヒマワリ・朝顔・リンドウ憧れ・一日一生・正義
彼岸花・コスモス忘れない・調和
スノードロップ・シクラメン希望・純潔

季節感を取り入れることで、追悼の意をより豊かに表現できます。

奇数本(3〜7本など)で左右対称に配置し「ひし形」にするのが基本とされます。

奇数本は割り切れない陽数で縁起が良く、仏事にふさわしいとされます。四十九日までは白や淡色を中心に、以降は他の色を加えて構いません。

  • 仏壇やお墓に花を供える目的:仏さまの慈悲に触れ、故人への感謝を示す
  • 菊の定番理由:長持ちする/白色の清浄さ/高潔・長寿の象徴
  • 百合:清潔・純潔/花粉除去が必要
  • カーネーション:感謝を伝える花言葉/丈夫で長持ち
  • 季節の花:春夏秋冬の思い出を届ける
  • 避けたい花:香りが強すぎる/トゲ・毒・ツル植物など
  • 本数・配置:奇数本、ひし形に左右対称で美しく

お供えする花はマナーも大切ですが、やはり一番大切なのはあなたの「心」です。美しい花を通じて、故人や仏さまに思いを届ける、その祈る気持ちこそが供養の本質です。

四季の風景を写す花々は、ただの装飾ではなく、信仰と記憶を結ぶ言葉です。仏花・墓花を通じて故人とのつながりを感じ、祈りの気持ちを育む時間は、とても尊いものでしょう。ぜひ次の訪問には、色・香り・形、すべてに「ありがとう」の思いを込めたお花を添えてみてください。小さな花々が、きっとあなたの心に穏やかさと安らぎを届けてくれることでしょう。

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