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動物にも届く供養のこころ ― ペット供養のいま昔

はじめに ― 家族のような存在へ

現代の日本において、犬や猫をはじめとするペットたちは、単なる愛玩動物ではなく、「家族の一員」として深い愛情をもって迎えられています。その存在は、日々の癒しであり、心の支えでもあります。しかし、命あるものには必ず別れのときが訪れます。

かつては「動物の死」に対する供養は簡素に済まされることも多くありましたが、近年では「ペット供養」「動物供養」という言葉が広まり、手厚く祀られるようになりました。今回は、ペット供養の歴史と今、そして仏教における「いのち」へのまなざしについてご紹介いたします。

昔の動物供養 ― 慰霊と感謝のかたち

日本では古来より、牛や馬といった労働力としての動物に対し、感謝と慰霊の気持ちを込めて供養する文化がありました。特に農村では、「牛馬供養塔(ぎゅうばくようとう)」や「犬猫供養碑」などが建てられることがありました。

これらは、単に動物の死を悼むだけではなく、その働きに感謝し、冥福を祈る仏教的な精神に基づいています。「生きとし生けるものすべてに仏性が宿る」とする仏教の教えが、動物たちへの供養を支える背景にあったのです。

とはいえ、昔は今ほどペットという概念が一般的ではなかったため、供養の対象は実利的に人間の役に立った動物が中心でした。愛玩動物に対する供養が一般化するのは、もう少し後の時代です。

現代のペット供養 ― 祈りとともに生きる

現代では、犬・猫だけでなく、ウサギや小鳥、ハムスター、さらには爬虫類や昆虫に至るまで、多様な動物が「家族」として迎え入れられています。そしてその死後、「人間と同じように供養してあげたい」という願いから、さまざまなかたちのペット供養が広がっています。

たとえば、

  • 専門のペット霊園での埋葬・法要
  • 動物病院と提携した火葬サービス
  • ペット用の位牌や仏壇
  • ペットと一緒に入れるお墓(合祀墓・合同墓)

など、ペット供養の選択肢は年々多様化しています。また、インターネットを通じた「オンライン供養」や「リモート法要」など、新しい形も生まれています。

仏教では、「人間だけが特別な存在」とは考えません。法華経などの経典においても、「生きとし生けるものすべてが仏性(ぶっしょう)を持つ」と説かれています。これは、動物も植物も、すべての命が等しく尊いという教えです。

そのため、動物への供養もまた、人間への供養と同様に、大切な行いとされています。たとえ言葉を交わせなくても、愛情と信頼を交わした動物たちの存在は、まさしく「縁(えん)」によって結ばれた関係なのです。

供養とは、その「縁」を尊び、感謝し、祈りを捧げる行い。人間同士と同じように、動物たちにも思いを届けることは、仏教における慈悲の実践でもあります。

愛するペットを亡くした悲しみは、計り知れません。ふとした瞬間に寂しさが押し寄せ、涙がこぼれることもあるでしょう。そんなとき、手を合わせて供養をするという行為は、心の癒しとなり、悲しみを和らげる助けにもなります。

また、供養を通じて「ありがとう」「また会おうね」と語りかけることで、亡き存在とのつながりを再確認することができます。これは仏教における「縁起(えんぎ)」の教えにも通じており、命が単独で存在するのではなく、あらゆる縁によって成り立っていることを示す証でもあるのです。

「動物供養」は決して特別なものではなく、すべての命に祈りを捧げるという、ごく自然な心のあらわれです。亡きペットのために手を合わせるその姿は、仏教が説く慈悲の精神そのものであり、現代における供養のかたちの一つの答えといえるでしょう。

これからも私たちが、すべての命に対して感謝と祈りを忘れずにいられますように。

ペットもまた、私たちに多くの「仏縁」を与えてくれる、大切な存在なのです。

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