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数珠をなぜ左手に? ― 意外と知らない仏具の作法

はじめに ― 数珠はただの飾りではありません

お参りのときや法事の席で、手に数珠を持つ方の姿をよく見かけます。数珠は仏具のひとつとして欠かせない存在ですが、実は持ち方や意味には多くの作法と深い信仰が込められています。

とりわけ、「数珠は左手に持つ」という教えがあるのをご存じでしょうか?今回は、数珠の持ち方の理由から、珠の数や種類に込められた意味まで、意外と知られていない数珠の奥深い世界を紹介いたします。

なぜ左手で持つのか? ― 身口意を清める仏教的意味

仏教では、人の行いを「身(からだ)・口(ことば)・意(こころ)」の三つに分けて考える教え(「三業」)があります。この三つの行いを清らかに保つことが修行の基本とされています。

数珠を左手に持つ理由は、この三業のうちの「身業(しんごう)」、つまり“身体の行い”を清めるという意味があるとされます。

また、仏教において左手は「受ける」「無垢(けがれがない)」という意味合いを持つこともあり、数珠を左手に持つことで清浄な意識で仏様と向き合うことができるとされているのです。

ただし、宗派や作法によっては合掌時に両手にかけたり、右手に持ったりすることもあり、一概に「左手が正解」と決めつけられるものではありません。とはいえ、仏教的な意味を大切にする上では、「左手に数珠を持つ」ことが基本とされるのです。

数珠の珠には意味がある ― 基本の珠数とその意味

数珠はその名の通り、数を数えるための仏具です。本来はお経を唱える際に、その回数を数えるための道具でした。珠の数や形状にも深い意味があります。

もっとも一般的な「正式念珠」は108個の珠を持ちます。これは仏教における「煩悩の数」と同じ。数珠を繰ることで煩悩を一つずつ祓っていくという意味が込められています。

108という数字には以下のような説があります:

  • 六根(眼・耳・鼻・舌・身・意)×三(好・悪・平)×二(浄・不浄)×三(過去・現在・未来)=108
  • 一年の暦の中で除夜の鐘が108回撞かれるのも、この煩悩を表す数字から来ています。

数珠には様々な種類がありますが、特に正式なものは宗派によって形状や持ち方が異なります。

例えば:

  • 浄土宗・浄土真宗:二重の輪になっていることが多く、房の位置や形も独特です。
  • 曹洞宗・臨済宗:シンプルな一重の輪に大きめの親珠が特徴。
  • 日蓮宗:二連念珠で中間に「引き輪」がついているのが特徴。

一般的な家庭用の略式念珠は、宗派を問わず使えるデザインで作られていることが多く、法要やお参りに持っていくには十分です。

数珠には美しい房(ふさ)がついていますが、これにも意味があります。房は「煩悩を払い、仏とつながる橋」とも言われており、単なる飾りではありません。

また、房の形にも種類があり、宗派によって「梵天房」「撚り房」など使い分けられることがあります。房の色もまた、故人への供養や仏さまへの敬意を表すものとして、落ち着いた色合いが好まれます。

  • 合掌時:数珠を両手にかけて合掌するのが一般的。
  • 読経時:左手にかけて珠を繰りながら心を込めて唱える。
  • 持ち歩き時:ポケットに入れるよりも、袋や専用のケースに収めるのが丁寧。
  • 落とした場合:神聖な仏具なので、落とした際は軽く拭いたり、手を合わせて丁寧に扱いましょう。

数珠は単なる道具ではなく、私たちの心と仏さまをつなぐ大切な「縁」のひとつです。その使い方や持ち方に心を込めることで、祈りや供養の時間がより深く、尊いものとなります。

お参りの際にはぜひ、数珠を左手にそっと持ちながら、ご先祖さまや仏さまに心を向けてみてください。

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