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仏教における“時間”のとらえ方 ― 今を生きるということ

私たちは日々、「時間」に追われながら生きています。朝は時計を気にして出勤し、予定に間に合うように行動し、一日の終わりには「今日も時間が足りなかったなあ」とつぶやくこともしばしばです。しかし、仏教では、この「時間」について少し違った見方をしています。今回は、仏教における時間のとらえ方について、いくつかのキーワードをもとに掘り下げながら、「今を生きる」ということの意味を一緒に考えてみたいと思います。

一瞬即永遠 ― 刹那のなかにある真理

仏教では「刹那(せつな)」という言葉で、極めて短い時間を表します。実はこの「刹那」は、インドの時間単位の一つで、現代の科学でいえばわずか1/75秒ほどとも言われています。つまり、私たちの命も、心も、常にこの「刹那刹那」で生まれ変わっているというのが仏教の教えです。

これは、時間が流れているのではなく、私たち自身が「移ろい変化している」ということを示しています。一瞬ごとに変化し続ける世界の中で、私たちは何を思い、何を選び取っていくのか。その「今」の積み重ねが、やがて未来をつくっていくのです。

「一瞬即永遠」という言葉もあります。これは、たった一つの“今”の行動や心持ちが、永遠に影響を与えるほどに大切だという意味でもあります。過去の後悔にとらわれることなく、まだ来ぬ未来を憂うことなく、今この瞬間を丁寧に生きる――それこそが仏教の時間観の核心なのです。

三世とは ― 過去・現在・未来をつなぐもの

仏教では「三世(さんぜ)」という概念があります。これは「過去・現在・未来」の三つの時間軸を指します。

一見、私たちの考える時間と同じように見えますが、仏教における三世は「時間の直線的な流れ」というより、「すべてがつながっている円環」のようなものとしてとらえられています。過去の行い(因)が、現在の結果(果)となり、今の行いが未来を形づくっていく――いわゆる因果応報の教えも、まさにこの三世の中にあります。

過去は変えることはできませんが、過去をどう受け止めるかによって、現在の生き方は変えられます。そして、現在の選択が未来の方向を定めていくのです。三世を意識して生きるということは、今この瞬間が、すべての時間とつながっていることに気づくことです。

日常にひそむ“無常”の教え

仏教では「諸行無常(しょぎょうむじょう)」という言葉がよく語られます。これは、「すべてのものは変化し、永遠に同じであるものはない」という真理を表しています。

私たちは時に、変わらない日常を望んでしまいます。「この幸せがずっと続いてほしい」「この関係が変わらないでほしい」と願うことは自然なことです。しかし、仏教はその願いに対して、「すべては移ろいゆくものですよ」と優しく諭します。

無常を受け入れるということは、変化を恐れず、その都度丁寧に向き合っていく力を持つことでもあります。老いも、別れも、環境の変化も、すべては無常の一部。その一瞬一瞬の変化を慈しみながら、私たちは生きていくことができるのです。

仏教における時間のとらえ方を、実生活に生かすためにはどうすればよいでしょうか。その一つの方法が「念仏」や「写経」、「坐禅」などの実践です。

たとえば、何気なく「南無阿弥陀仏」と唱えるとき、その一声一声に心を込めてみる。写経をするときには、筆の運び一つひとつに集中してみる。坐禅の呼吸に合わせて、ただ“今ここにある”自分を感じてみる。

それは、過去や未来から心を解き放ち、「今」をしっかりと見つめる練習でもあります。忙しい日常のなかでも、ふと手を合わせる瞬間や深呼吸するひとときを大切にすれば、そこに仏教の時間観が息づいているのです。

現代社会では、スケジュールや目標に追われ、「今を味わう」ことがどこか遠ざけられてしまいがちです。しかし、「時間が足りない」と感じるのは、本当にそうなのでしょうか。

仏教の視点に立てば、どんなに忙しい日々でも、心の持ちようによって「満ち足りた時間」に変えることができます。むしろ、“忙しいからこそ”今を味わうことの大切さを教えてくれるのかもしれません。

時間に使われるのではなく、時間を慈しみ、味わい、いのちの一瞬一瞬に感謝して生きていく。そこに、仏教が説く“時間”の真の姿があるのです。

昌楽寺では、そうした仏教の教えを大切にしながら、皆さまの祈りや想いに寄り添う供養を行っております。

とくに「なごみの杜霊苑」では、静かな自然に包まれた空間の中で、故人を偲ぶひとときを大切にしていただけます。永代供養をはじめ、生前申込など、未来への準備もご相談いただけます。

「供養とは、亡き人のためにするもの」と思われがちですが、実は「今をどう生きるか」に深く関わる行為でもあります。過去から現在、そして未来へとつながる祈りの時間を、ぜひ一緒に育んでまいりましょう。

いつでもどうぞ、昌楽寺やなごみの杜霊苑にお立ち寄りください。あなたの“今”に寄り添う場所が、ここにあります。

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